相手から見つけてもらうマーケティング『インバウンド・マーケティング』、その手法とは?
売上げを上げるには、これらのサイトにおいて見込客からからいかに「見つけられるか」に尽きる。この「見つけられる」ことをインバウンド・マーケティングという。
自社サイトより、自社のウェブサイト以外で起きていること、コミュニティに注力する。自分のサイトが一つの街だとするなら、他のサイトは他の街、それをつなぐ道路の役割を果たすのがソーシャルメディアやコミュニティになる。ソーシャルメディアで自分の街と他の街をつないで地方の町を東京に変えていくイメージだ。
「モノを売るまえに、モノを売る人・買う人のつながりを強めよ!」ハーバード・ビジネス・レビューのソーシャルメディア特集
Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 04月号の特集は『ソーシャル・メディア戦略論』。5つの興味深い事例をピックアップ。
Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 04月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2011/03/10
- メディア: 雑誌
- 購入: 2人 クリック: 24回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
ベイル・リゾート
- 五つの大型スキー場を運営するベイル・リゾート。これまで掲載までの期間が長い出版物に広告を出してきた。一方旅行客は数週間から数日前にスキー旅行を予約。ギャップが存在。ベイル・リゾートはリードタイムが短い新聞やネット、旅行客が使うFacebook、Twitterへシフト。スタッフは、ゲレンデの滑走風景を迅速に投稿する。リゾート客の楽しくエキサイティングな雰囲気を伝え、顧客獲得へ。
体験型商品はFacebookやTwitterで体験している様子を伝えるというのが肝心になっている。PS3はゲームそのものを、Wiiはゲームしている人を見せたという話は有名だけど、ベイル・リゾートも同じようなアプローチをとっていると言える。
ブライアン・J・ダン (ベストバイCEO)
- 米ベストバイのサイトの売上げは店舗売上げ全体の50%以上、約30%の顧客がオンラインで商品を注文し、店頭で受け取る。
- 私は、概してソーシャル・ネットワーキングのよい面に目を向けるようにしている。「それをどうやって売上げにつなげるつもりなのか」という質問をいつも受けるが、そういう質問自体が間違っていると思う。「どうやって、あなたと顧客、そしてあなたと社員との結びつきを強めるつもりなのか。また、顧客や社員との対話をどのように深めていくつもりなのか」と問うべきだろう。
- ソーシャル・ネットワーキングのよい面に目を向ける。「どうやって売上げにつなげるか」という質問は間違い。「どうやって、あなたと顧客や社員との結びつきを強めるか。彼らとの対話をどう深めるか」と問うべき。
米家電量販店『ベストバイ』CEO自らがソーシャル・ネットワーキングに積極的に取り組んでいる。発言の中で興味深いのは顧客と社員とのつながりが第一でその結果として売上げにつながる。そしてそのつながりをつくっていくのがソーシャル・ネットワーキングであってそれに取り組まないのはナンセンスとはっきり伝えていること。
モノを売るまえに、モノを現場で売る人・買う人のつながりを強めようという話は納得感がある。
ティム・ディクソン (Blendtec)
- 米調理器具メーカー『ブレンドテック』CEOトム・ディクソン自らがiPhoneをブレンドテック製品で砕く動画は900万回再生。売上高は過去3年で7倍に。
トム・ディクソンがiPhone4をぶっこわす動画はこちら。
http://www.youtube.com/watch?v=fLreo24WYeQ
こういうことをCEO自ら大真面目にやるというのが大事。ふざけたことを大真面目にやるというのがソーシャルメディアで受け入れられる。
ブシュロン
- 宝石や香水を扱う仏『ブシュロン』。上海の顧客のアドバイスにより、顧客とのつながりを200人のカクテル・パーティーとスピーチから20人の豪華ディナーと強い交流に変更。成功をおさめる。
単にイベントをやるだけでは物珍しくない。リアルでは少ない人と濃くつながる。その人達にしっかりとサービスを知ってもらう。サービスへの愛をその人たちに語るというのが大切。
食品や日用品を定期購入&10%割引の『Amazon定期おトク便』
お米や洗剤ってみなさんどこで買われていますか?
楽天?Amazon?それともネットスーパー?
なんだかんだ近所のスーパーでという方も多いのではないでしょうか?私もそうですが、毎週、一週間前(*1)に買った品物とほぼ同じ品物を入れたカートを押してスーパーマーケットから出てくる。
素朴な疑問として、
- 「いつも決まって買っているものを事前にピックアップしておいてくれたら楽なのになぁ」
- 「一週間分とか二週間分とか取りに行くか配送してくれるといいな」
- 「たくさん買うから割引も欲しいな」
ということがあります。
そこに目をつけたサービスがAmazonの『Amazon定期おトク便』です。
『Amazon定期おトク便』では、食品と日用雑貨を指定された数量、指定された感覚で定期購読できる。割引も効き、品切れは起きません。
Amazon定期おトク便
http://www.amazon.co.jp/b?ie=UTF8&node=2149888051
忙しいママに買い物時間を削減するという触れ込みでサービス展開してみるようですね。
近くの値段がこなれたスーパーでこういうサービスがあったら便利に使うという人はいそうなもの。スーパーマーケットもある商品を継続的に購入してくれ経営が安定、ついで買いも増えるという面で良い。でもあまりメジャーになっていない。
スーパーマーケットがこういった定期購読に踏み切れない理由がありそうです。
- 自宅までの配送コスト
- ピックアップ済み商品の置き場所のコスト
- ピックアップの人件費
あたりでしょうか?
1についてはスーパーに取りに来てもらうということで解決できそうです。2と3については悩みそうです。都市部で特に2が問題になりそう。全国でみた場合でも3は問題になる。
今のネットスーパーでは店舗から店員さんが商品を個別にピックアップしたり、あるいは大型の配送センターを構築、ピックアップコストを下げている(*2)。
では
- 小中規模スーパーで配送センターを構築せずピックアップコストを下げるためにはどうしたらいいか
- 定期購入してくれる方に追加提案ができるか、どういう提案が受け入れられるか
という点が気になります。さてさて。
注
- 1 スーパーの「ポイントカード」、満足度は「低い」 日経消費マイニング
- 2 英国の事例に見るネットスーパー展開のポイント NTTデータ経営研究所
生き残ったプライスライン、現在売上16億ドル
プライスライン、ご存知ですか?
「ああ、あれか。その後どうしたんだろう」と思った方はネットマニアですね。
実は、あのプライスライン。今絶好調なんです。毎年16億ドルの売上、6億ドルの利益。社員は1324人で、一人当たり売上は190万ドルにのぼっています。グリーが154万ドルですからそれを上回っています。
プライスラインをご存じない方に説明するとフライトチケットやホテルなどを自分で値付けして、その値付けを相手が受け入れればめでたく交渉成立。破格の値段でサービスを利用出来るというわけです。
大きな特徴は、サービス提供先が匿名であること。値段が安い代わりにどこの航空会社かどこのホテルかはサービス利用者からは分からないのです。
実はこれがプライスラインの大発明、そして今日まで生き残っているビジネスモデル。『スマート・プライシング』では次のように説明されています。
プライスラインの不透明な販売方法は、特定のタイプの顧客、すなわちオファーについての重要な情報を知らないまま前払いするリスクをいとわないほど価格を重視するバーゲン・ハンターだけを選び取る、新しいタイプの選別メカニズムの役割を果たしたのだ。(『スマート・プライシング』)
商品のブランド名や他の特性を隠すという手法は、直接的な比較購入を難しくし、そのおかげで売り手は自社のブランド商品に引き続きプレミアム価格をつけることができた。(『スマート・プライシング』)
航空会社は早割などを通じて自社で需給調整を行っています。ただ痛いのは自分たちのブランドで安いチケットを販売しないといけないところ。ホテルも同じですよね。
でもプライスラインを通じて販売すればブランドを安売りせず、高い価格でもOKな人には高い価格で、安い価格じゃないとだめな人には名前を伏せて提供できる。効果的に売上を確保できるというわけ。
サービスモデルの勝利ですね。
プライスライン
http://www.priceline.com/
- 作者: ジャグモハン・ラジュー,Z・ジョン・チャン,藤井清美
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/07/07
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 42回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
ベストセラーに必要なのは「完全におかしい」「イカれている」こと (『スゴ編。』)
編集の仕事について考えている人のためのブログメディア『編集者.jp』が9人の凄腕編集者にインタビューした『スゴ編。』そのなかでいくつかぐっときたフレーズを書きだしてみました。
スゴ編。カリスマ編集者から学ぶ7つの仕事力 (デザインビジネス選書)
- 作者: 編集者.jp
- 出版社/メーカー: 美術出版社
- 発売日: 2010/04/24
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
スカイライター 川辺秀美さん
- Q.ベストセラーに共通点があるとすれば何ですか?A.何か「完全におかしい」「イカれている」という感じです。(中略)完璧に振り切れていないと、手に取ってもらう基準に入らないんですよ。(川辺秀美 『スゴ編。』)
ダイアモンド社 加藤貞顕さん
- 1%の法則。本の部数はその本がターゲットとする潜在顧客の1%が最大。日本人全員をターゲットにする本なら100万部となる。(加藤貞顕 『スゴ編。』)
- タイトルはだいたい1冊につき、最低でも100個は考えるようにしています。(加藤貞顕 『スゴ編。』)
PHP研究所 横田紀彦さん
- おそらく、クリエイティビティと言われるものは、手作業を通じてしか生まれない。だから仕事を丁寧に着実にこなせる人が、編集者の第一の条件と言えるかもしれません。(横田紀彦『スゴ編。』)
三笠書房 清水篤史さん
- 校正者の能力は赤字の量に正比例する。編集者の能力は意見の量に正比例する。(清水篤史『スゴ編。』)
ソーシャルギフトという可能性をLivlisに見る
smashmediaの河野さん @smashmedia がソーシャルコマースについてのエントリーを書いています。
ほしいとかもっているとかそういうことを投稿させるだけでソーシャルコマースとはちゃんちゃらおかしいという趣旨のことを書かれていると思います。多少私の見方が偏っているのかもなのですが。まったく同意です。
以前イケダハヤトさん @IHayato がインタレストグラフのサービスについてエントリーを書いていたのですが、それに対する返信という形で次のようなエントリーを書きました。
まとめると、
これまでよりも多くの反応を返す
これまで得られなかったような反応を返す
ってことが肝心なんじゃよということです。
つまり、自分のもっているとかほしいとかそういう情報を投げたとして、なんの反応もなく、その情報をなげてAmazonで買ったときのようにレコメンドした商品がでてくるわけでもないという(あるいはその精度が低すぎるとか)のはちょっといただけないよねという話ですよね。インタレストグラフとかソーシャルコマースとか言いたいだけじゃないかと。
私としてはやっぱりFacebookでもTwitterでもブログでも無いサービスで突き抜けられることって、やっぱり反応の多さと新しい反応の二つを提供できるかどうかに尽きると思うんですよね。前者を突き詰めるなら割りきってマイノリティメディアの集合体を目指す方向性。後者を目指すなら相当にクリエイティブな提案ができるということ。
また根本的にタイムラインという時系列での情報配置に少し問題意識をもつべきだも思っているんですよね。最近。これはおいおいブログで書こうと思っています。フロー情報とストック情報という意味でブログの価値って高まっているんじゃないかと思っていたりします。
閑話休題。
河野さんがソーシャルコマースの記事の中で次のようなことを書かれています。
ソーシャルコマースで増えるのはギフト需要くらいです。
これかなりそうですね。Livlisで本を20冊くらい手渡ししてますがそのなかで女性の方ってかなりの割合でちょっとしたギフトをくださるんです。クッキーだったり、息子のために仮面ライダーオーズのフィギュアとか。こちらはまったく期待していないので本当にびっくりしてありがたいなぁと思って同時に自分の気配りのなさにがっかりしたりするのです。
このお返しとしてのギフトというのは、ソーシャルコマースの一つのソーシャルギフトという中のさらに、『お返しソーシャルギフト』という分野で一つありうるんじゃないかと思っています。やっぱり何かしてもらったら何かでお返ししたい。お金でのお返しもいいけど、3000円もらうなら3000円分の蟹セットもらったほうが満足度高かったりするし、ああ、私のこと考えてくれたんだとか思える可能性がある。
TwitterやFacebookみてああこの人カニ好きなんだ、じゃあ蟹セットプレゼントしようみたいな気配りがあるとかなり衝撃的なうれしさだと思います。そのうれしさを提供できる土台ができつつあるってのが今の時代の面白さであって、その面白さをサービスに自然に落とし込んだり組み入れたりするのが作り手の腕の見せどころですよね。
参考
インタレストグラフ系サービスを作る際に気を付けるべきこと | ソーシャルウェブが拓く未来
http://www.ikedahayato.com/?p=4888
ソーシャルコマースねえ
http://smashmedia.jp/blog/2011/08/003756.html
中小企業向けASP型マーケティングサービスを提供する『HubSpot』2010年年商2,000万ドルへ
熊坂仁美さん @hitomikumasaka の『Facebookを集客に使う本』からHubSpotの事例が大変興味深かったのでメモ。
- 作者: 熊坂仁美
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2011/06/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 47回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
中小企業向けASP型マーケティングサービスを提供する『HubSpot』が2010年の年商を前年比350%の2,000万ドルと売上を急速に伸ばしている。
彼らが提供するサービスはブログ、SEO、ソーシャルメディア、LPO、各種分析ツールなど多岐に渡る。
http://www.hubspot.com/products/
価格はコンタクト数と利用するサービス数で変化するが最低200ドル〜に設定されている。
http://www.hubspot.com/pricing/
HubSpotはガンガン営業をしない。その代わりガンガンコンテンツを作る。ひたすら作る。HubSpotの社員の約5分の1の40人が一ヶ月間に
ものコンテンツを作り出している。
これらのコンテンツが営業マンの代わりにお客さんを連れてくる。その数月に2万5,000件。
HubSpotが作り出した集客手法は次のようなもの。
- 大量のコンテンツを作る。
- 自社サイトにコンテンツを置く。
- ウェビナー、Eブック、動画ポッドキャスト等のヘビーコンテンツはメールアドレス登録を必須とする。
- Facebook、Twitter、YouTube、メール(オプトイン済み)に流し、自社サイトへ誘導する。
- マーケティングのASPサービスの30日間無料お試しに申し込んでもらう。
- 無料お試しの数割が顧客となる。
ソーシャルメディアを集客に徹底的に使う一方でコンテンツは徹底的に自社サイトにおいて、マーケティングASPを無料お試しさせるために利用する。
結果、自社サイトへの流入経路はブログが24.75%、Facebookが19.14%、Twitterが16.91%となっている。ブログから7-10%が自社サイトを訪れて、お試しし、そのうち10-20%が顧客になるという計算だ。
コンテンツが顧客を連れてくるという考え方はとても新鮮だ。誠意があるように見える。
ほぼ日で糸井さんがHubSpotに興味をもち、HubSpotもほぼ日に興味を持ったのも、彼らがお互いにコンテンツが大切だという感覚えつながったからなんだろう。
ほぼ日刊イトイ新聞 - “Unusual(変わってる)...”
http://www.1101.com/hubspot/index.html
クリエイター型の会社が無理せず成長していくというひとつのアプローチとしてHubSpotは参考になるかもしれない。