川崎裕一 / マネタイズおじさん

元起業家でスタートアップのコーチやってます。スマートニュース株式会社執行役員。

「モノを売るまえに、モノを売る人・買う人のつながりを強めよ!」ハーバード・ビジネス・レビューのソーシャルメディア特集

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 04月号の特集は『ソーシャル・メディア戦略論』。5つの興味深い事例をピックアップ。

ベイル・リゾート

  • 五つの大型スキー場を運営するベイル・リゾート。これまで掲載までの期間が長い出版物に広告を出してきた。一方旅行客は数週間から数日前にスキー旅行を予約。ギャップが存在。ベイル・リゾートはリードタイムが短い新聞やネット、旅行客が使うFacebookTwitterへシフト。スタッフは、ゲレンデの滑走風景を迅速に投稿する。リゾート客の楽しくエキサイティングな雰囲気を伝え、顧客獲得へ。

体験型商品はFacebookTwitterで体験している様子を伝えるというのが肝心になっている。PS3はゲームそのものを、Wiiはゲームしている人を見せたという話は有名だけど、ベイル・リゾートも同じようなアプローチをとっていると言える。

ブライアン・J・ダン (ベストバイCEO)

  • 米ベストバイのサイトの売上げは店舗売上げ全体の50%以上、約30%の顧客がオンラインで商品を注文し、店頭で受け取る。
  • 私は、概してソーシャル・ネットワーキングのよい面に目を向けるようにしている。「それをどうやって売上げにつなげるつもりなのか」という質問をいつも受けるが、そういう質問自体が間違っていると思う。「どうやって、あなたと顧客、そしてあなたと社員との結びつきを強めるつもりなのか。また、顧客や社員との対話をどのように深めていくつもりなのか」と問うべきだろう。
  • ソーシャル・ネットワーキングのよい面に目を向ける。「どうやって売上げにつなげるか」という質問は間違い。「どうやって、あなたと顧客や社員との結びつきを強めるか。彼らとの対話をどう深めるか」と問うべき。

米家電量販店『ベストバイ』CEO自らがソーシャル・ネットワーキングに積極的に取り組んでいる。発言の中で興味深いのは顧客と社員とのつながりが第一でその結果として売上げにつながる。そしてそのつながりをつくっていくのがソーシャル・ネットワーキングであってそれに取り組まないのはナンセンスとはっきり伝えていること。

モノを売るまえに、モノを現場で売る人・買う人のつながりを強めようという話は納得感がある。

ティム・ディクソン (Blendtec)

  • 米調理器具メーカー『ブレンドテック』CEOトム・ディクソン自らがiPhoneをブレンドテック製品で砕く動画は900万回再生。売上高は過去3年で7倍に。

トム・ディクソンがiPhone4をぶっこわす動画はこちら。
http://www.youtube.com/watch?v=fLreo24WYeQ
こういうことをCEO自ら大真面目にやるというのが大事。ふざけたことを大真面目にやるというのがソーシャルメディアで受け入れられる。

ブシュロン

  • 宝石や香水を扱う仏『ブシュロン』。上海の顧客のアドバイスにより、顧客とのつながりを200人のカクテル・パーティーとスピーチから20人の豪華ディナーと強い交流に変更。成功をおさめる。


単にイベントをやるだけでは物珍しくない。リアルでは少ない人と濃くつながる。その人達にしっかりとサービスを知ってもらう。サービスへの愛をその人たちに語るというのが大切。

ダンカン J ワッツ (Yahoo! Research)

  • 流行は数人のインフルエンシャルが引き起こすのではない。周りの誰かがブランドなどを身につけたりするのを見て影響されやすい人がある一定数に到達することで生まれる。森林火災の規模は火花とは関係なく森林の状態と関係あるのと似ている。

インフルエンサー重視の傾向に待ったをかける意見。Facebookページのように、そのサービスやブランドに興味を持ち、「点火待ち」状態になっている人たちとつながることが肝心だということ。点火するタイミングをしっかり見極めるというのも同時に大切だけれども。