川崎裕一 / マネタイズおじさん

元起業家でスタートアップのコーチやってます。スマートニュース株式会社執行役員。

ニュース+タレント+有力ブロガーでニュースの価値を上げる手法

キシリトールブームを作ったインテグレートの藤田さんが日経ビジネスオンラインで連載している記事の中でキシリトールが妊婦から子供への虫歯菌感染予防に効果的であるというニュースを如何に広めていったかについての手法がくわしく書かれています。

流れとしては次のようなものです。

  1. 岡山大学医学部の研究の結果、妊婦がキシリトールガムをかむと子供への虫歯菌感染を予防できることが分かった。
  2. この事実について日本フィンランドむし歯予防研究会(JFSCP)のウェブサイトで分かりやすいビジュアルを用意した。
  3. このPRの目標を「若い既婚女性をこのページに呼び込むこと」と決定した。
  4. キシリトール」、「母子感染」等でSEO対策した。
  5. マスメディア向けセミナーに石黒彩さんをはじめとする有力ブロガー25人を集めた。
  6. ブロガーが記事を書いた。
  7. 読売新聞が夕刊でこの研究成果について報道した。
  8. ヤフーニュースがヘッドラインに載せ、数多くのオンラインメディアにこのニュースが掲載した。
  9. ブログの数が一気に数百倍に増えた
  10. JFSCPのウェブに対するアクセスは数万倍になった。

広告と広報は私の仕事に大きく関わるものであるため大変興味深く読みました。

特に「多くの人が食いつくであろうネタを見つけ、それをわかりやすく説明するページを作る。」「目標をそのページに多くの人が来ること、ではなく更に落とし込んで若い既婚女性を呼び込む、としていた。」という二点が広報をしていく際に参考になるポイントだなぁと思います。

広報はともすればニッチなものをニッチな人たちにだけ届けるということになりがち。ですがこの場合、誰もが食いつくネタをしっかり見極める。そしてそれをきちんと誰でも内容が分かるようなページをしっかり作って届ける。そしてそのページに来てもらいたい人を具体的に絞り込んで目標設定しています。

逆にいえば、来てもらいたい人が明確に絞られているからこそ、ウェブサイトでの内容の伝え方も明確になっていくのだろうと思います。少なくないウェブサイトが「ここで言いたいのは何なんだろう?」となっていることとは対照的です。

そしてセミナーの仕掛け方も興味深いです。マスメディアとしては、虫歯菌予防についての成果に加えて、a.石黒さんというタレントがいること、b.ブロガーが25人も来ていること、二つがこのセミナーをニュースにする気になります。つまりこの二つの仕掛けがニュースとしての価値が高めているわけです。

更にオンラインメディアの構造についても藤田さんは深い理解があります。オンラインメディアが既存のマスメディアからニュースを仕入れていること、ブロガーがそれらからニュースを知ってブログに書くことが多いことを知っているからこそ、如何にCGMをマスメディアと「現実的に連携させるか」に視点があるわけです。

ブログやSNSが単純なタイアップ記事ばかりで埋め尽くされるのではなく、しっかりとした目標と深いコミュニケーションを設計した上で、価値のあるニュースをより多くの人たちに届ける加速装置として使われていくことは、ネット、リアル問わず良いことだと思います。藤田さんがおっしゃるCGMはPR発想が向いているというのは私も同感です。今後やっていく仕事でそこらへんを意識して掘り下げていきたいです。