川崎裕一 / マネタイズおじさん

元起業家でスタートアップのコーチやってます。スマートニュース株式会社執行役員。

ウェブ時代 5つの定理 サービスについて

ウェブ時代 5つの定理 - kawasakiのはてなダイアリー

昨日ウェブ時代 5つの定理について書きました。今日はその中で自分なりに『サービスについて』として分類した三つの言葉について書きたいと思います。

eBayのピエール・オミディアの言葉です。

■p.56
「全く見ず知らずの人間でも信頼できる」ということを、
eベイは一億二千万人もの人たちにわからせたのだ。── ピエール・オミディア
eBay has taught a hundred and twenty million people that they can trust a complete stranger.──Pierre Omidyar
Spreading the Gospel of the Bottom-Up, A Conversation with Pierre Omidyar, GBN, 2004 参考

私は、インターネットというものに携わるようになってからずっと『ネットを信じる。そこに住んでいる人を信じる』という価値観に疑いを持ったことはありません。今その価値観は私という個人を支えるものとなっています。

私がこの価値観に最初に触れたのは大学三年のときでした。学祭に向けたゼミの論文をチームで完成させその論文を自分のウェブサイトにアップしておきました。その論文をその当時のアンダーセンコンサルティングを辞め、自分でインターネットのサービスについて情報発信をするメールマガジンを発行していた松山太河さんからメールが来たのです。その当時まったく松山さんのことを知らなかったのですが純粋な興味であってみました。合うなりシリコンバレーのスタートアップの名前を次々に出してそのビジネスモデルについて色々議論をした記憶があります。松山さんは同じようにメールを大学生に送っていました。グリーの山岸副社長、田中社長、ミクシィの笠原社長、フラクタリストの小川社長、RSS広告社の田中社長、ここでは書ききれないたくさんの仲間たち。とても大切な仲間です。

次は私が以前P2Pのコミュニティを運営しているときの体験です。何の実績も無く、技術的な背景も無い若造がP2Pの可能性について熱さだけをもってメーリングリストを作り、ウェブサイトを作り、P2Pに関するウェブサイトや書籍をかたっぱしから翻訳して共有していた時、その活動を実に多くの人たちが支援してくれました。翻訳を手伝ってくれた人、P2Pのプロトコルを一緒に考えて実装までしてくれた人、ウェブサイトのデザインを考えてくれた人、安価なサーバを見つけてきてくれた人、サーバの設定をしてくれた人、様々な人が実際に合うことなく見返りを求めることなく、純粋に熱っぽく語る若造に本当に力を貸してくれました。P2Pのすごさを知らしめるためには本場に行かねばダメだということでO'Reillyが主催したカンファレンス*1にも参加しました。日本人は当然ですが誰もおらず英語もろくにしゃべれなかった私ですが参加していた人、特にスピーカーのウェブサイトはほぼ全て網羅していたのでその場で色々質問をしたりしました。さぞかし迷惑だったでしょうがみんな嫌な顔一つせずに答えてくれました。二回目か三回目かにはboingboingのcory doctrowと仲良くなって彼のオフィスにも連れて行ってもらいました。

私は、P2Pの活動を通じて、ネットの奥深さ、ネットに住んでいる人のすごさを実感を伴って思い知りました。そして進むべき道も決まりました。あのとき力を貸してくれた人たちからもらった恩をネットで何倍、何十倍、さらにはもっと大きく返そう。そう思ったのです。

ピエール・オミディアはeBayというコミュニティを通じてその言葉にたどりつきました。私は、ネットに身を預けて信じたからこそ、大事な仲間との出会い、P2Pとの出会い、この節目となる大きな二つの出来事に出会うことができたと思っています。

私は、はてなでより多くの人に『ネットを信じる。そこに住んでいる人を信じ』てもらうことを実現したいと考えています。

これがピエール・オミディアの言葉を大事に思う理由です。

■p.231
良い人々がより良く振る舞えるようにする環境づくりを、
本気で考えなければならないと思う。
同時にネガティブな人々のもたらす影響を弱めて
小さくすることも重要だ。── ピエール・オミディア
I really think it's important to just focus on what the environment needs to look like to encourage the good people to behave even better and to mitigate and minimize the effects of the negative people. ──Pierre Omidyar
Rules for Freedom ,PC Forum 2006

■p.180
私たちは、グーグルを「世界をより良い場所にするための機関」
にしたいと切望している。── ラリー・ページ
We aspire to make Google an institution that makes the world a better place.──Larry Page
Letter from the founders,

この二つの言葉も私の中ではつながっています。多くの人に『ネットを信じる。そこに住んでいる人を信じ』てもらうために必要なことが環境作りです。良い人々が良く生きることができ、ネガティブな人々の影響が弱まる環境。とても大事なことです。

ラリー・ページの言葉を借りるなら、私を始めとしてはてなの社員はみな、はてなを「世界をより良い場所にする」ための『会社』『場所』言い方は様々あると思いますがそのようなものにしたいと思っています。

ネットはもっと多く人をつなげることができる。人はネットを使うことで信じられない力を発揮することができる。そのためにはネットは信頼に足る場所でなくてはならない。そう考えています。

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