川崎裕一 / マネタイズおじさん

元起業家でスタートアップのコーチやってます。スマートニュース株式会社執行役員。

手品とiPod

先日同僚とランチしながら手品の話をした。

『カードの束に混ぜたはずのカードがなぜか一番上にくる』と手品がある。束の下に入ったカードがなぜが一番上にきている不思議な体験。でもタネはシンプルだ(種明かしは[を] 手品の種明かし映像)。

この手品における目標は『カードの束に混ぜたはずのカードがなぜか一番上にくる』ということ。その目標が達成できればどんな手を使っても良い。

普通の人はトランプに何らかの仕掛けをしてカードが自動的に他のカードをすり抜けて一番上にきたと考える。そのための方法をひたすら考える。でも答えは出ない。ひょっとしたらすごい革新が起きてそれができるようになるかもしれないけどかなり時間がかかるだろうしそこまで待っている余裕は無い。

マジシャンは自分のテクニックを駆使し幾つかの組み合わせでマジックを成立させる。一つ一つはシンプルだが習得に熟練を要する地味なものだ。

iPodを考える。『アップルの法則』 - kawasakiのはてなダイアリーで紹介した『アップルの法則』でiPodの初代機が作られた時の話が書かれている。

iPodの目標は『いつでも大量の音楽を持ち歩ける』ということだった。

最初iPodはハードディスクドライブ(HDD)に音楽を保存し再生するデバイスとして作られた。しかしHDDから直接音楽ファイルを常に読み出して再生するとバッテリーの減りが大きく持ち歩いてもすぐにバッテリーが無くなる。あまつさえHDDは軸があるため持ち歩いて衝撃があると音飛びが起きてしまうという二つの問題があった。

普通の人はこのときどう考えるか。例えばHDDの省電力化を進める。HDDの耐衝撃性を高める。まじめにこつこつと問題解決に挑んでいく。

アップルは、HDDの隣にフラッシュメモリーを置いた。HDDから音楽をフラッシュメモリーに移動させたらすぐHDDは停止。これによって省電力を達成し耐衝撃性を高めた。

初代のiPodで達成された『いつでも大量の音楽を持ち歩ける』デバイスを見た時に技術者は手品のように見えたかもしれない。

普通のがんばりやさんの技術者はどのように省電力を達成し耐衝撃性を高めたかを知るためにワクワクしながらiPodを分解してみる。結果は隣にフラッシュメモリー。そのあまりにシンプルなタネに唖然とする。

目標を達成するためのアプローチはたくさんある。目標を達成するためにしなくてはならない作業がある。しかしながら作業に時間をみっちりかけていくことだけで目標を達成できるかといえばそうではない。

視点を切り替えるだけで問題を一気に片付け目標に近づくことができる。任天堂の宮本さんも言っている。

つまり、宮本さんによれば、
「アイデアというのは
 複数の問題を一気に解決するものである」

そのアイデアは一見するとばかばかしいほどシンプルだったりするかもしれない。それを見極めて採用できるかどうかが大事かなと思ったりしている。