川崎裕一 / マネタイズおじさん

元起業家でスタートアップのコーチやってます。スマートニュース株式会社執行役員。

図解 鈴木敏文の「商売の人間学」―なぜ、買うのか売れるのか

図解 鈴木敏文の「商売の人間学」―なぜ、買うのか売れるのか

図解 鈴木敏文の「商売の人間学」―なぜ、買うのか売れるのか

はてなでお世話になっている税理士の吉田さんのおすすめということでチェックしました。
税理士吉田貢の辛口ダイアリー

コンビニの王様セブンイレブンで実践されていることの中から自分が気になったところを書き出してネットでそれを展開するならどうするかなぁと考えてみました。

消費者ニーズは多様化しておらず、ブームが多様化しているだけ。

例えばAからEまでの商品があるとします。消費者のニーズが多様化しているならば売れた商品一覧を見ると大小の差はAからEの商品で作られるはずです。しかし売れ行きを分析するとAとBしかないということは多々あります。翌日になると今度はCとDがすごく売れているということが起こる。

これは時系列で分析すれば理由が分かります。多様化したのはAやBといった商品のブームとしての時間なのです。Aの次に売れたのがB、Bの次に売れたのがCという具合に売れていく。一つ一つのブームの時間は短いから、ある一定時間をとるとAからEまでで多様化しているようにみえる。

一方である一日だけの売上を見てみるとAだけが売れている日。Bだけが売れている日という形で全然消費者ニーズは多様化していない。コンビニやスーパーで起きている現象がこうなんだそうです。

ネットの場合はどうする?

例えばiPodが発売になった場合にはすぐさまiPodの看板をトップページや目立つ場所に大きく出す。他社に先駆けて多くのサイト訪問者(以下訪問者)がそのサイトでiPodを買うような仕掛けをまず作ってやる。

商品に関するプレスリリース、商品を取り上げたニュースサイトを紹介するページを作成し、サイトの文末に商品画像とテキスト、アフィリエイトリンクを掲載しておく。訪問者に商品に対する理解を客観的な情報源をまとめて提供し知識を深めてもらう。あくまで興味を持ったらお買いあげくださいというスタンスを崩さないことが肝心です。

ネットの場合は、リアルと比べて特に情報消費と情報伝達の速さが際だっています。故に情報をある程度のまとまり(情報のチャンク化)にしてサイトの価値を出して、サイトに対して好感を持ってもらう。次も新製品がでたらまた来ようと思ってもらう。こういった差別化を行うことが地道ではありますが売上が上がるようになる可能性が高いと思います。

忘れられがちですが大事なことは売れ筋とランキング作成はプログラムでできるのですが、この結果を人がどういう風にとらえて編集し、物語をつけて訪問者に伝えるかが大事です。このプログラムの人の「共存」は手間隙がかかりますが、故に差別化の要素となりえます。(ちなみにはてなにとってはここが課題*1。)

商品のライフサイクルは富士山から茶筒へ

商品のライフサイクルはこれまでは徐々に人気が高まりピークに達してから徐々に落ちる富士山だった。しかし今は今は一気に立ち上がりピークに達し一気に落ちる茶筒になった。そこで商品の販売に携わる人間は情報をきちんととって商品を一気に展開し、一気に終了できる体制を築くことが大事だ。結果として機会ロスと廃棄ロスを極力無くすことができるようになる。

ネットの場合はどうする?

ネットとリアルの最大の違いは在庫をもたずに商売ができることです。利益率は低いが在庫リスクを考えれば最終的な利益率はネットの方が高くなる可能性が高いという側面があるでしょう。在庫を持たないため様々な商品陳列、商品の組合せをトライアンドエラーすることができます。売れ筋をアフィリエイトサイトの分析ツールでチェックし一時間単位、30分単位、15分単位でサイトの商品紹介を変更することができます。

スーパーマーケットやコンビニというリアルな店舗ではPOSから仮説構築して店頭実施という流れがあります。ネットではアフィリエイトのデータ分析ツールが充実しているためデータ分析までは誰でもできるようになりました。重要なのは依然として仮説構築の部分です。その商品がなぜ売れたのか、理由は何か。こういった理由は売上データだけでは分析できません。外部の要因、例えば検索エンジンクエリー数の変遷、サイトのリンク元の変遷、テレビや雑誌、新聞で特集されたことによる原因を分析することなく理解するのは至難の業です。コマースに限らずマーケティング・販売に携わる人は様々な媒体動向、ニュース動向を把握することで売上を拡大させるためには必要不可欠です。

アンテナを高く持ち、アンテナで捉えた事柄の関係性を見抜く。関係性から仮説を作り、理論を作り、結果として売れる商品を見抜く。売れそうと思った商品に対してその理論を適用してみて、PDCAを回すことができるかが大事です。トライアンドエラーのリスクはリアルなビジネスと比べて少ないのですから試さねば損です。

7割は衝動買い

スーパーやコンビニで目的を持って商品を買う人は3割しかいない。ついでに何かを買ってしまうことで売上の7割が生まれる。

ネットの場合はどうする?

ネットにおいては例えばAmazonの関連商品リンクを使うのはオーソドックスな方法です。関連商品は商品と関連性がある他の商品を提案するというアプローチ。他に考えられるアプローチとしては、時間、場所、人などが考えられます。

  • 時間。具体的には朝売れるものと夜売れる物は異なる。朝はビジネス書が売れるかもしれないが、夜はエンタメ本が売れるかもしれない。
  • 場所。会社ではビジネス本が売れるかもしれないが、家では映画やヨガのDVDが売れるかもしれません。
  • 人。尊敬するあの人が読んでいる本なら取りあえず買おうとなるかもしれません。

これも「消費者ニーズは多様化しておらず、ブームが多様化しているだけ」で前述したとおり、プログラムでできるところは徹底的に加工させて、それを人がどう見せるかを考えることが大事。物語を作ることができるのは今のところ人間だけです。

陳列(信頼・おすすめ)、声かけ(信頼・安心・コミュニケーション)、試食(経験・確認)

買う価値があるかを確認する作業が試食。顧客は常に新しいものを求めるが誰もがいきなり飛びつくわけではなく確認作業が行われて初めてどっと買うようになる。

ネットの場合はどうする?

「7割は衝動買い」のところと同じです。物語を作れるのは人間だけです。

*1:と思う